そしてFireflyの登場は、アドビの戦略を鮮明にした。アドビが目指すのは、AIモデルそのものの覇権ではなく、AIを使う場所──PhotoshopやIllustratorといった制作現場そのものを押さえることだ。AIを制作ツールに自然に溶け込ませ、クリエイターの作業効率と表現の幅を広げる。これは、世界中のクリエイターが日常的にアドビ製品を使うからこそ可能なアプローチである。
Fireflyは、AIとクリエイターの対立を“技術”ではなく“信頼”の問題として捉えたアドビの答えであり、AI時代の創作環境を再設計するための象徴的なプロジェクトとなった。
文化庁「AIと著作権に関する関係者ネットワーク会議」──アドビが示した透明性の原則
アドビは企業としての取り組みにとどまらず、日本の政策形成にも積極的に関与している。その象徴が、文化庁が2024年に立ち上げた「AIと著作権に関する関係者ネットワーク会議」だ。生成AIの急速な普及により、著作権制度が前提としてきた人間による創作という枠組みが揺らぎ始めた今、AI開発企業、権利者、クリエイター、プラットフォーム事業者が一堂に会し、共通理解を築くための対話の場として設置された。